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人事権・解雇権の濫用

━━☆━━━━━━━━━━━━━ 人事権・解雇権の濫用 ━━━━━━━━━━━━━━
         
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┏┏    ◇ 会社の人事権とは
┏┏    ◇ なぜ広範な人事権が認められたか
┏┏    ◇ 実績の上がらない者への懲戒
┏┏    ◇ 事情を抱える者への転勤命令は人事権の濫用か        
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                 会社の人事権とは
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労働者を企業組織の構成員として受け入れ、組織の中で活用し、組織から放出する権限を指す
と言われています。狭い意味では、人事権とは、採用、配置、異動、人事考課、昇給、休職
解雇など、企業組織における労働者の地位の変動や処遇に関する使用者の決定権限を指してい
ます。
判例:安田信託銀行事件・東京地判昭60.3.14労判451-27
では、人事考課は、その性質上企業の「広範な裁量に委ねられている」とされています。

それでは人事権は無制限なのでしょうか。いいえ。
一般的に労働契約の合意の範囲を超えては行使できず、また権利濫用法理、均等待遇原則、不
当労働行為の禁止などの法規制を受けます。
さらに、労働協約就業規則などによる規制を受けることもあります。

民法では、典型契約の1つとして雇用を623条から631条までの9か条で定めています。
その623条は「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働にすることを約し、相手方がこ
れに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」として雇用
約が双務諾成契約であることを示しています。
また、労働基準法では労働条件の最低基準を定め罰則をもって、強制的に契約内容の修正をす
るものです。

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               なぜ広範な人事権が認められたか
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もともと日本では、慣行として終身雇用を前提とした雇用管理が行われていたので大きな人事
権を認めても、雇用が保障されているのであれば、人事権に対する被雇用者の権利も大きく損
なわれることがないと考えられたからです。

裁判所では、当事者の合意がどのようなものであったか、それを明らかにするためには、労働
契約就業規則の内容を確認し、それでも明らかにできない場合は、当事者の合意内容を補充
解釈して、契約の内容や当事者の解釈された合意内容から、トラブルの内容がこれらの合意や
民法雇用の規定や一般条項に反していないかどうかを判断というやり方で解決を求めてきま
した。当事者の合意を補充する中で、今まで裁判所は幅広く雇用者に人事権というものを認め
て判断してきました。

ところが、終身雇用や年功序列などの日本型の雇用管理制度が崩れてきたため、裁判所の判断
でもおのずと人事権の範囲を縮小せざるを得ない状況になってきているようです。
合意内容の補充としての人事権が縮小してしまう以上、その分合意内容は充実したものとする
必要があります。だから今後はますます雇用契約就業規則、また労働契約法という個々の雇
契約を補充する法律の重要性が高まることでしょう。

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              実績の上がらない者への懲戒
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会社側にとって満足の行かない勤務実績であっても、遅刻や無断欠勤が頻発している訳でもな
く、その延長で一方的な異動を行ない、従わないとして解雇処分を行なうなら、民事的に争っ
た場合、会社側に厳しい判断がされると予想されます。
つまり、客観的に労使間の信用失墜行為(遅刻等および勤務時間内の怠業など)の立証が困難
であり、それに起因する異動辞令の合理性が争点になるため、会社側の処分に一貫した合理性
が認められないと考えられるからです。

賞与
就業規則労働契約労使協定に定められていれば、会社に支払い義務が生じます。
賞与であっても、定められた算定基準、算定式に則って支払わなければ、違法となります。
まったく成果の上がらない者だとしても、成果反映部分はゼロにしても(就業規則等で定めら
れていればあり得る)、一律部分も社長の一存でゼロにしようというような恣意的な運用は許
されません。

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           事情を抱える者への転勤命令は人事権の濫用
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工場閉鎖により他工場に転勤することを命じられた者が、これに応じて転勤するか、又は転勤
せずに退職金と特別退職金を受領して退職するかを選択すべきことを書面で通知され拒否しま
した。
理由はこの者が、妻、2児、実母との5人家族で、妻が非定形精神病であり、生活の援助が必
要で、転勤は妻の病状の悪化を招く可能性があるから。

 ●会社との雇用契約では、特に勤務場所を限定する旨の明示はなく、むしろその各契約書
 には「雇用中に、あなたは、他の勤務地へ転勤されることがあり」と記載されており、就業
 規則第には、「会社は、業務上の必要に応じ、従業員に異動を命ずる。異動とは、身分の変
 更、役職および資格の変更、配置転換、職種の変更、転勤、長期出張、駐在もしくは出向
 派遣をいう」と定められている。

しかし転勤を拒み、他工場に勤務する雇用契約上の義務のないことを確認すること等を求めて
提訴しました。

判決:配転命令権の濫用に当たる
配転の必要性を認めつつ、「その具体的な配転については、これを全く避けることができない
ものであるならば、労働者の不利益が大きくても、その配転はやむを得ない。しかし特に転居
を伴う遠隔地への配転は、労働者に多大な負担を与えるものであるから、その不利益について
十分考慮して行うとともに、適正な手続を経て、公平に行わなければならないし、育児介護休
業法26条の適用がある場合には、その配慮も必要である。」としました。

そして、介護を必要とするまでには至っていないものの妻が非定形精神病であり、家事を行う
ことが困難で、単身で生活することが困難な状態であり、その治療や生活のために肉体的精神
的な援助が必要であり、本件配転命令に従うことによって、妻のための治療の援助が困難とな
ったり、その症状が悪化する可能性があったのであるから、「本件配転命令によって受ける不
利益は通常甘受すべき程度を著しく越える」と認定し、被告の配転命令権の濫用に当たる、と
しました。(平成17.5.9 神戸地裁)


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名無し

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